何十年も前から行ってみたいと思っていた、寺町通の「キムラ」。なんともクラシックな外観のこの店の前を、数え切れない程何度も通りかかっています。「そんなに行きたかったのならもっと早く行けばいいじゃないか」とのご意見もごもっともなんですが、ここまで時間が掛かったのはここがすき焼専門であるが故。昼ご飯には贅沢な気がするし、晩ご飯にしてはなんとなく京都らしくない気がするし、ってことで見送ってきてたんです。
ここんとこ夜の京都では「三木半」連発だったもんで、今回は違うところにしようと決めてました。京都に向かう途中でこの店のことをふと思い出し、妻に持ちかけたところ即決。この時代にあってもなお下足番のおっちゃんがいるこういう風情のある建物は、建て替えたりしないうちに行っとかないといけませんからね。
入口で靴を脱いで下足番のおっちゃんに下足札をもらい、それをもって2階へ。そうか、3階は宴会場なのか。
下足札を仲居さんに預けると、席を案内してくれます。チープなちゃぶ台に、ガスコンロと水が入ったケトル、表通り側の窓にはすだれ。いいなあ。
「すき焼」はロースと並の2コース、ネット上の情報で200円違いならロースにしておくべきとあったので、メニュー選択には迷いませんでした。「あしらい」というのは肉以外の野菜・豆腐・糸コンニャク等のセットのこと。「赤玉ポートワイン」なんちゅうもんがメニューに書いてあるところがシビれますなw
仲居さんが何人かいてはっても、基本的には自分達で作るシステムなので、作り方解説が備え付けられています。裏面は英語表記で、読んでるとけっこうオモロイ。写真撮っときゃよかったなあ。
すき焼の作り方には色んな流儀がありますが、ここのは初めてのタイプ。油をひいたらまず野菜・糸コンニャク・豆腐を入れ、その上に肉を載せて砂糖を振りかけ、だし(みりんと醤油ベース)を注ぐ。砂糖が溶けたら肉を鍋肌で焼き、麩と三つ葉を加えなさいと。昭和7年創業の歴史に逆らう理由などあるはずもなく、当然素直にこの通りに作ることにしました。
(以下、2人前です)左・焼き豆腐・麩・三つ葉・糸コンニャク、中・小さなとっくりに入っただし・玉ネギ・京ネギ、右・生玉子。ディフォルトではご飯は付いていません。
主役の肉は、かなり大きくスライスされたのがお皿一面に盛られてきます。この価格と場所柄からすれば、質的にも予想以上に上質。さすが歴史あるお店やなあって感じ、仕入れルートがきっちりしてるからでしょうね。
まもなく完成の図。全量の半分で1回目を作って食べきり、残りの半分で2回目と2ラウンド方式にしました。味としては「まさにすき焼」、それ以外の何物でもない。割り下を先に敷く作り方が好きではないので、焦げ付きにくいこの流儀は理に叶ってるなあと思いました。肉質は軟らかく脂に甘味があり、充分満足。ここ一軒で済ますならご飯追加すれば量的にも充分じゃないでしょうか。
すき焼もおいしかったんだけど、ここでは建物やお店の空気感を味わう楽しみも大です。外人さんのお客さんもけっこう見かけ、仲居さんの説明やら彼らの「これなんだろ?」的会話が漏れ聞こえるのがまた楽しい。生玉子に浸けて食べる習慣なんてまずないだろうから、驚いてるだろうなあ。
{お店データ}
住所:京都市中京区寺町通四条上ル大文字300 電話:075-231-0002
営業時間:12時~21時 定休日:月曜(祝日の場合は翌日)・第3火曜
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