※このエントリは「デミグラスソースを求めて/前編〜トミーとの出会い」の続きです。
よろしければそちらからお読み下さい。
大阪から神戸の自宅までえて吉さんに迎えに来てもらったのが8時頃。そこから名神高速〜北陸自動車を経由して、めざすレストラン トミーに到着したのが11時半ごろ。大きな通りからちょっと中に入った場所にある一軒家レストラン、英字の表記はTOMYじゃなくってTOMIYなんですね。
マダムともうお一人女性スタッフがフロア担当。エントランス入って左右ある部屋のうち、左側に案内していただきました。カジュアルでもなく重厚過ぎるでもなく、その中間のややフォーマルな雰囲気。調度やクロスなどから「あ、ここは大丈夫」って思わせる信頼感みたいなものを感じました。
テーブル上のランチメニュー。ステーキランチ以外の3種は週替わりで、お店のサイトでそのメニューが紹介されています。そこに載っている料理の数々やお皿を見てるだけでも楽しいし、このお店の只者ではなささを感じられると思うのですがいかがでしょう。
さて、はるばるやってきて、何を注文するかが大問題。内容的にも価格的にもランチメニューは魅力的、でも一番の目的はドミグラスソースなんだから、この日の内容は不適切。サイトで紹介されていたアラカルトメニューは事前に目を通していたものの、その中からさて何を選ぶべきか随分悩みました。大好きなビフカツ食べてみたいしなあ、でもソース重視ならやっぱりシチュー系かなあ、けど値の張るもの選んでもしハズレだったらダメージ大きいしなあ…
悩みまくったあげく選んだのはビーフシチュー(2500円)。ビーフカツレツ(2500円)食べたかったけれど、今回の目的がデミグラスなんだからちょっと違うか。それならシチュー系にしようと決めたけれど、一番食べてみたかったタンシチューは3240円だから、もしハズレだったらイタすぎるし。昼食に単品2500円は十分高価なんだけど、わざわざ福井までやってきたんだからこれくらいは仕方がないと駄目元で腹をくくりました。
ワクワクしながら待つことしばし、出てきたのがこちら。お皿の中心部が白く、黒い料理とのコントラストが強すぎてiPhoneでは綺麗に撮れていませんでした。それくらい黒い。ネットで見たとおり、あるいはそれ以上にほぼ黒に近いソースを目にして、ぞくっと寒気。これはやはり永年僕が探していたデミグラスではないか、ビンゴ!だと。
ナイフを入れると、スムースに切れるのはお約束。ソースをビーフにまとわせ、口に運ぶと…
まず感じたのは、何十年ぶりかで嗅ぐあの軽い焦げ臭が混ざった香ばしく重厚な香り、続いて苦味・酸味・旨味。やや酸味が立ってくること以外は、甘味はほとんど感じず、ほぼ僕の頭に中にあったもの。そう、これが僕が慣れ親しんできたあのソース、出会いをあきらめてかけていたあの味に、やっと再会することが出来ました。再会の嬉しさ・今もなおこのソースが残っていることのありがたさ・たまたまネットで発見できた驚き・福井という場所にこのソースが存在している不思議さなどなど、色んな想いが溢れ出てきて感無量。まさかこんなところで出会えるとはなあ。
僕らがわざわざトミーで食べるためだけに福井までやってきたとフロア担当のマダムに言うと、色んな話をしてくれました。(以下箇条書きで)
- マダムは初代の娘さんで、ご主人は現在のシェフであり2代目、息子さんが3代目。(サイトトップの写真参照)
- 初代は
福井大阪出身、大阪のレストランや神戸の今はなきニューポートホテル(マダムの話では回転レストランがあったホテル)でコックとして働いていた。
(追記訂正:初代は京阪神様々なホテルでの経験があり、神戸ではオリエンタルホテル。ニューポートホテルは2代目でした) - かつて福井が人絹(=人造絹糸)王国と呼ばれ栄えた時代に建設された「人絹会館」の会員制レストラン「CR(=Club Rayon)」のシェフとして迎い入れられた。
- その腕を見込んだ常連客達から独立を勧められ、昭和23年独立、トミーを開店。
- ドミグラスソースは初代の教えのまま作っており、完成まで1ヶ月程かかる。
- 古いソースを継ぎ足すことはなく、一から作る。(その過程としてビーフシチューやタンシチューもできる?)
…うーん、すごいなあ。なんで福井なのかと思ったら、こういう背景と歴史があってのことでした。今もなおこのソースを継続できるのは、初代の後継としてこれが店の命なんだと語るマダムや現在のシェフの意志が生半可じゃないからなんですね。絶滅してしまったかと思われたソースがちゃんと存在している、そしてそれを継承する3代目がいる、素晴らしいことだと思います。
ご飯の追加をお願いしたら、マダムが「どうぞソースを混ぜて食べて下さい、お好きな方はそうされるんですよ」と、一つ上の写真の追加ソースまで持ってきてくれました。ソースがごちそうなんだから、具がなくってもこれだけで充分おいしい即席ハヤシライス状態。ご飯に合うなあ、やっぱり洋食だなあ。
うまいうまいと食べてる途中、マダムに「そういやネットで調べている時に読んだんですが、たまにしか作らない牛タン入りクリームコロッケってのがあるらしいですね」と話したら、「実は今日はあるんです」とのお答え。そしてそしてありがたいことに、その牛タンコロッケをサービスで出してくれたんです!(注:お試しサイズですw)
タンはシチューの余り物ではなく、わざわざこれのためにに作ったそうで、崩れておらずちゃんと小さなダイス状。タン・ベシャメル・ドミグラスと手間の三重奏のコロッケ。濃厚な旨味で、いやあ、もう参りました。
マダムによると、11月になってセイコガニが解禁になってしばらくして値が落ちついた頃にどさっと買い込み、期間限定でセイコガニのクリームコロッケを作るそうです。内子も外子もカニミソも入ってるらしく、想像するだけでこりゃもうあかん!!
洋食に関しては、僕はそれなりに色んなところで食べてきたつもりです。たまたま出会ったこのトミーのデミグラスソース、これはその中のどこにもありません。苦味が立ったこの味をお気に召すかどうかはわかりませんが、洋食好きの方ならば、これを経験するためだけにでもわざわざ福井まで行く価値があるお店だと思います。(というか、本音は「食べとかなあかんやろ!」と言いたいw)
あーん、タンシチュー食べたい・ビフカツ食べたい・ハヤシライス食べたい・セコガニクリームコロッケ食べたい・日替わりランチも食べてみたい〜 また福井に行きたいなあ…
{お店データ}
住所:福井市上北野1-24-3 電話:0776-53-3080
営業時間:11時~13時半(L.O.)17時~20時半(L.O.)
定休日 :木曜日(祝日の場合は営業)
コメント
「デミグラス」「黒い」をキーワードに画像検索で自分の求めるドミグラスソースを探し出してしまうその執念は凄いと思います。実は僕も好みの洋食屋探しに「ビフカツ」「厚い」の画像検索を使ったりしてます\(^o^)/うまくヒットした時は最高にハッピーですよね。それにしてもトミー、大当たりでしたね。福井に住んでいた頃レストランCRが大好きだった僕としても是非とも行ってみたいお店になりました。次回トミー行きを計画される時にはお声をかけてくださいm(__)m
画像検索はけっこういいアイデアだと思ったんですが、そうですか、すでにやってはりましたか(^^ゞ
探し出しただけではずっとモヤモヤしたままだったでしょうから、わざわざ日帰りで走ってくれたえて吉さんには本当に感謝しています。
素敵な旅になりましたね!
黒いドミグラスソースの歴史の流れも分かり、ishさんの舌の想い出もよみがえり
しかもとっても上質の良いお店でそれに巡り会えるなんて。
食に対する好奇心(しつこいとも言う:笑)を常に持っていたいものです。
私も画像検索はよくやりますよ。
旅行予定の場所で“蕎麦”とか“レトロなパン”など検索してお店を探しています。
食材+レシピで検索して美味しそうな料理の画像を見て献立の参考にしたり
何かと使えて便利です♪
あー、ぷるみえさんも画像検索使ってたんですか。
いいアイデアだと思ったのに、遅れてたなあ(^_^;)
確かにこの件に関してはしつこいです(笑) でも相当しつこく追いかけてもダメだったので、もうダメかと思ってたんだけど、予想外の場所で見つかってほんとに嬉しかったし、ホッとしています。
いつもながらあの奇特な方のアシストに随分助けられてますなあ。