【旧】foodish:”雑”食記

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割れない器

Posted ish / 2005.05.02 Monday / 11:10

10年前の阪神・淡路大震災で僕自身も経験したことですが、地震の後、食器への興味が薄れたという方はけっこういらっしゃるのではないでしょうか。
あの日我が家の食器棚は倒れてしまい、たくさんの食器が割れてしまいました。そんなに高価なものをそろえていたわけではないけれど、皮肉なことに比較的無事だったのは安物。空しさを感じながら、床に散らばる破片をほうきやちり取りで掃除しつつ、ああ、もう食器にこだわるのはやめにしようと思った、という話は色んなところで聞きました。

といいながらも、料理の脇役としての食器はとても大切。何かのおまけについてきたお皿や、百均で買ってきたコップばかりでは寂しすぎます。食器に凝るのはやめようと決めたものの、日を追うごとに自分の欲との葛藤が少しずつ始まりました。そして、何がきっかけだったかは憶えていないのですが、いつの頃からか漆器に興味を感じ始めていました。ひょっとすると、漆器は割れないという考えが潜在的にあったのかもしれません。英語で磁器はchina、漆器はjapan。日本を代表する器を使ってみたいという気持ちもありました。

ところが、ご存知の通り漆器は扱いが難しい。熱や固いものに弱く、洗った後は充分な乾燥が必要、その一方、保管時は乾燥させすぎるとダメ。しかも、それなりのものはそれなりの値段がします。その扱いづらさから、目にするのは、お正月のお重くらいという方も多いのではないでしょうか。
仮に使うとなれば、ハレの日用ではなく普段使いしたいと思っていたけれど、ただでさえめんどくさがりの僕が漆器をちゃんと手入れできるとは到底思えなかったし、高価なものを買うほどの余裕もない。漆器を買うなんてやっぱり現実離れしているかなあと思っていたところ、あるイベント会場で偶然に出会ったのが、「漆器工房・鈴武」さんでした。
漆器1.JPG
鈴武さんのHPでは各種作品を見ることができます。いかにも漆器というものもある中、他の漆器と何が大きく違うか、どこが優れているのかと言えば、とにかく日常使いを目的として意識していること。全ての作品がそうというわけではないと思うのですが、何しろ売れ筋の一つにラーメン鉢があるくらいで、熱いものもOK、脂ものも気にしない、洗剤でジャブジャブ洗ってよし。刃物などの刃を立てない、使った後で長時間水に漬けっぱなしにしないということを守れば、ごくごく気軽に毎日の食事に使えるんです。
傷がつかないよう気を使いながら食事をし、痛まないように洗い保管するといった過保護なイメージからはほど遠く、言い方は悪いですが、多少乱暴に扱っても全然平気な野生児の漆器なのです。日常の食事に気軽に使いたい、という僕の希望にまさにぴったりだった訳ですね。

漆器2.jpg
もう5年ほど前になるでしょうか、僕が買ったのは一辺が15センチほどの角皿。一枚2000円だったか2500円だったか。今だ目立ったキズやソリなど一切なく、年数を経て落ち着いたいい感じの艶になっています。
わずかに縁がついていて、多少お汁気がある食べ物にも使えます。漆の効果なのか、脂ものを載せた後も洗剤でさっと洗えば簡単に汚れが落ちるし、軽くてシンプルなデザインなのでとにかく扱いやすい。おもに取り皿として使う場合が多いのですが、うちの家族もごく自然にこの角皿を食器棚から選び出す場合が多く、ほんとに買って良かったと思えるお気に入りの器の一つになっています。大した料理でなくてもいい器を使っていれば、なんとなく豊かさを感じられていいもんですよね。

鈴武さんの品物が会津若松の工房以外にどこで入手可能なのかはよく知らないのですが、HPの「展示会のご案内」にあるように、全国各地で実演販売をなさっています。
おりしも、5月8日までインテックス大阪で開催中の食博に出店中だそうなので、もし食博に行かれる場合はぜひブースを覗いてみて下さい。(4号館ブースNo.4-3)
(食博は入場料が必要なので、わざわざ行くくらいならデパート催事の時のほうがお得です♪)

{工房のデータ}
住所:福島県会津若松市門田町一ノ堰 会津漆器工業団地内 
電話:0242-27-9426
*蒔絵体験教室もやっておられます。行ってみたいなあ。

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